あるブロガーさんが「人生の一冊」として紹介していたので、手に取ってみました。
読み始めて最初に感じたのは、不思議な感覚です。
「これは小説なのだろうか?」と思わせるほど、劇的な展開があるわけではありません。
しかし、その文章はどこまでも透明で、なんとも言えない「まったり」とした、あるいは「ゆったり」とした時間が流れています。
社会の喧騒から離れて、静かな雨音を聞いているような読書体験。
これは、人生につまずいている時や、少し立ち止まりたい時に読むと、心が救われるような本です。
今回は、池澤夏樹さんの芥川賞受賞作『スティル・ライフ』をご紹介します。
全体を見るから、動けなくなる
この小説には、科学的な知見や哲学的な視点が散りばめられていますが、中でも特にハッとさせられた一節があります。
主人公たちが語る、人生の選択についての言葉です。
大事なのは全体についての真理だ。部分的な真理ならばいつでも手に入る。それでいいのならば、人生で何をするかを決めることだってたやすい。全体を見てから決めようとするから、ぼくのようなふらふら人間が出来上がるのだ。
【感想】「ふらふら人間」でいいじゃないか
この言葉の意味、わかりますでしょうか?
私たちはつい、目先の利益や小さな「部分的な真理」を追い求めがちです。確かに、目先の目標や正解があったほうが、「いま何をすべきか」を決めるのは簡単です。
でも、この主人公はもっと大きな「全体」を見ようとしています。
僕もそうなんですが、無駄に老後の心配をしたり、「人生とは何か」なんて壮大なことを考えたりしていると、結局いま何をしていいかわからなくなってしまいます。
そして、「ぼくのようなふらふら人間が出来上がるのだ」というわけです。
一見、ネガティブなことのように思えますが、この本を読むと「それでもいいんだ」と思えてきます。
社会のレールに乗って効率的に生きることだけが正解ではない。全体を見ようとして迷ってしまう不器用さもまた、人間らしい愛すべき姿なのだと感じさせてくれます。
まとめ:静かな時間を持ちたいあなたへ
『スティル・ライフ(静物画)』というタイトルの通り、この本は動きの少ない、けれど美しい絵画のような小説です。
- 毎日忙しすぎて、自分がどこにいるかわからない
- 将来のことを考えすぎて、足がすくんでいる
- ドラマチックな物語よりも、心に染みる文章を読みたい
そんな方は、ぜひこの本を開いてみてください。
焦らなくていい、ふらふらしていてもいい。そんな静かな肯定感が、あなたの心を癒やしてくれるはずです。
▼今回紹介した本はコチラ
スティル・ライフ impala e-books
池澤夏樹 著

